始まりの始まり

この写真は約2年前、茅ヶ崎の海で撮影したものです

当時の私はひどく落ち込んでいて、今振り返ると軽い鬱のような心理状態だったのだと思います

以前から気が沈んでいる時は海に行って心を安定させることが多かったのですが、その頃は自分でコントロールできない予定が続いていました

この日は12月の日曜日で、家族の昼食を用意した後すぐに夕食の支度を始めました

私の不在が家族に迷惑をかけることがないよう、愛犬の世話を含め、全ての家事を終えて家を出た時には午後の3時を回っていました

車を運転しない私は、1時間半をかけて自宅から茅ヶ崎まで電車で向かうことになります

12月は1年で一番日が沈むのが早い時期です 電車の窓から見る景色が、次第に灰色がかって寂しげな色に変わっていきます 

『なんとか日没前に海に着きたい』

茅ヶ崎駅に着きました サザンオールスターズの「希望の轍」のメロディーを聴きながら、ホームを抜けて改札に向かいます 外に出ると、案じていた通り日は沈んでいましたが、まだなんとか「サンセット」という言葉が似合うぐらいの空色です そこから大通りをひたすら南下して、海に向かいました 駅から海までの距離は意外と遠いのです

高校生の頃、学校帰りに好きな人と歩いた時はそれほど気になりませんでしたが、次第に暗くなる道を焦りながら向かっていると、ずいぶん長く感じます

茅ヶ崎の海岸は国道沿いに砂防林が広がっていて、道路から海を望むことができません 海岸には砂防林の間の細い通路を通っていくことになります

そして、ようやく辿り着いた海 日は沈み、空の色は濃い群青色で、西の水平線辺りにはかろうじて沈んだ太陽からの光が滲んでいました

それでもなんとか写真に収めようと、急いでカメラのシャッターを切りました

今日一日頑張って家事を済ませてきたのに、夕暮れに間に合わなかった・・・ ファインダーを覗きながら、なんだか自分が惨めに思えて涙が出できました 朝から家事をして3食用意して愛犬の散歩も行って、ようやく自由な時間を作ったのに、海を見ることも出来ないんだ、と、暗い海を眺めながら情けないし切ないしで、いい歳したおばさんですがポロポロと涙が溢れました

その日は強風で、波は荒く、風と荒れた波の音がゴーゴーと響き渡ります 海岸に佇んでいるうちに、周囲は益々暗くなってきました 道路の方向に目を移してみても、砂防林で遮られて目に入るのは黒い樹々のみ 日没後の寒い冬の海岸なんて人っこひとりいません 

少し冷静になると、だんだん『ちょっと怖いかも。。』と思ってきました そうなると今度は恐ろしいシチュエーションが次々と頭に浮かびます 『ここで高波にさらわれたらどうしよう』『悪い人が来て、海に放り投げられても誰にも気付かれないな。。』などなど

それまでの悲しい気分は怖い気持ちにとって代わり、さっさとこの場を離れなければと足早に砂防林に挟まれた道を通り抜け、大通りに向かいました

134号線に出ると、辺りはすっかり夜 恐ろしい目に遭ったわけでもありませんが、なんだかやけにホッとして、来た道を戻り駅に向かいます 途中、お腹が空いてコンビニでチョコ菓子を購入し、口に入れながら歩きました

茅ヶ崎駅から自宅に向かいながら、来る時とは気分が変わっていることに気が付きました

今日一日、頑張った結果が上手くいかなかったこと それが情けなくて自分らしくて、なんだか面白くなってきたのです

その日を境に、ものすごく落ち込んで悲観的だった自分の心が変化してきました 多分、海岸で涙を流した瞬間が底だったのでしょう

この日に撮った写真は、底から這い上がる始まりの1枚という気がして、今でもとても気に入っています この写真を見る度に『ここから始まるんだ』と勇気がもらえるのです

ダラダラと取り留めのない話を書きました 読んでくれた方、本当にありがとうございます

                                       Elva

夕暮れ時の茅ヶ崎の海の風景。

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